記事を作成するうえで、覚えておきたいのが「引用」です。他人の文章を「引用」することで、記事の信頼性や説得力を高めることができます。
しかし、適切な方法で行わないと「著作権法違反」となることも。そこで今回は、記事作成時の正しい引用のルールをご紹介します。ライター初心者の方は、ぜひご覧ください。
なお今回の記事は、こちらの書籍を参考に作成しています。
引用とは?著作権との関係
引用とは?その意味
引用とは、「他人の絵や文章などの著作物を、自分の文章などに利用する行為」です。
引用と著作権との関係
「引用」を理解するには、「著作権」と「著作権法」を知ることが大切です。著作権とは「著作物に対する作者の権利」のことをいいます。
そして著作権法は、「著作物や著作権を保護するルールを定めた法律」です。この著作権法32条1項において、引用が認められています。適切な方法を行うのであれば(要件)、「他人の著作物を許諾なしに利用してよい」とされています。
引用という方法で「他人の著作物利用」が認められているのは、「どんなときでも『著作者の許諾』を得る必要があるようでは、他人の著作物を利用した発表がカンタンには行えず、著作権法の目的である『文化の発展』につながらない」ためです。
著作権については、こちらの記事でわかりやすく解説しています。
記事作成時の正しい引用の仕方
適法な「引用の要件」
引用には、法律違反にならないための「要件」、つまり「適切な方法」があります。そして「要件」は、著作権法の条文と判例によって定められています。
本『著作権法のしくみ』によれば、「適法な引用の要件」とは次のとおり。
著作権法では、①すでに公表された他人の著作物を、②公正な慣行に合致し、③引用の目的を果たす上で正当な範囲内で、引用することができると規定しています。
デイリー法学選書編修委員会編『著作権法のしくみ』より
それぞれの項目を具体的にご紹介していきます。
①「公表された他人の著作物」とは
「市販されている書籍」など、すでに公表されていることが条件です。まだ市販されていない文章を、引用してはいけません。
②「公正な慣行」とは
「公正な慣行」とは「これまでに行われた適切なルール」ということで、「出所表示」と「明瞭区分性」の2つがあります。
- 出所表示:引用した著作物が特定できるように、「書籍名」や「著作者名」を記載する
- 明瞭区分性:引用する部分を「」(カギカッコ)や ” ”(クォーテーションマーク)でかこむことで、引用文と利用者の文が区別できるようにする
③「正当な範囲内」とは
「正当な範囲内」とは、「利用者の文章が『主』で、引用する著作物が『従』である」という「主従関係」のことです。つまり、記事の9割が著作物の引用で、利用者の文章が1割だけでは「主従関係が逆転している」として、「正当な範囲内」とは認められません。
また、俳句や短歌以外の著作物は、原則として「一部の引用」までとなります。全部の引用は認められません。
記事作成時の正しい引用の仕方
ウェブサイトやブログなどの記事で文章を引用する場合は、次の手順で行いましょう。
【引用の手順1】引用する文章には<blockquote>タグを使う
引用した文章は<blockquote>タグで囲みます。こうすると上の項目で使用しているように「” ”」で囲んだ文章となり、要件②の明瞭区分性が確保できます。
さらに、<blockquote>タグを使うことで、検索エンジンに「重複ではないよ」と伝えることにもなります。SEO対策としても、このタグは重要です。
【引用の手順2】引用元を<cite>タグで表記する
著作名や作者などの引用元を、<cite>タグで囲んで表記します。こうすると「要件②の出所明示」が満たされます。
【引用の手順3】文章の一部のみを引用し、自分の記事を分量的に多くする
引用するのは、他人の著作物の一部のみとします。
また、引用文よりも、自分の書く記事の分量を多くします。これで「要件③の正当な範囲内」とされます。
引用以外の「適法な無断利用」
著作権法には、引用以外にも「適法な無断利用」の方法があります。ここでは引用以外の「適法な無断利用」を解説します。
転載
転載とは、「他人の著作物を、引用の範囲を超えて利用すること」です。「著作物の一部や全部」を利用することを指します。著作物の複製にあたるため、通常は「著作権者の許諾」が必要です。
ただし、次の場合の転載は「許諾の必要なし」と、著作権法において定められています。
- 国や地方公共団体などが作成した広報資料や報告書などを、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載する場合(32条2項)
- 新聞紙などで発行された時事問題に関する論説を、他の新聞紙若しくは雑誌に転載する場合(39条1項)
ですが「転載禁止」と記載されたものについては、転載は行なえません。
私的利用のための複製
家庭内や個人だけで楽しむために、テレビ番組を録画したり、雑誌をコピーすることは「適法な無断利用」です(30条)。
ただし、このデータをウェブサイトに載せてしまうと、公衆利用となるため「著作権法違反」となってしまいます。
図書館等における複製
図書館では、営利を目的としない事業として、図書や記録などを許可なく複製できます(31条)。
レポート・論文作成時の引用の方法とおすすめ本
レポートや論文で引用するときは、書式にそって原稿を作成します。書式は学問分野によってわかれており、たとえば次のようなものがあります。
- APA(エイピーエイ)書式:社会学の分野で使われる
- MLA(エムエルエイ)書式:文学の分野で使われる
- シカゴ書式脚注方式:哲学や思想、歴史などの分野で使われる
- IEEE(アイトリプルエー)書式:工学分野で使われる
上記の書式をさらに詳しく知りたい方には、こちらの本がおすすめです。各書式の特徴や引用の方法がわかりやすく記載されています。
・『レポート・論文をさらによくする「引用」ガイド』大修館書店
引用・著作権上のトラブルには専門家を頼って
引用のつもりで使った文章が「著作権の侵害だ」と警告が来たなど、著作権のトラブルに巻き込まれた場合。このような場合は迷わずに専門家に相談しましょう。
弁護士などの専門家を頼って、しっかり解決して、自分の本来の仕事に戻ることが大切です。
こちらは、信頼できる専門家を見つけることができるサイトです。困ったときには、まず相談してみてください。
・相談サポート:全国約1600事務所から相談可能事務所を探せるサイトです。無料での相談をおこなうこともできます。
参考文献
- 北村行夫ほか『Q&A引用・転載の実務と著作権法<第4版>』(中央経済社)
- 加藤晋介『改正著作権法がよくわかる本』(成美堂出版)
- 牧野和夫『初めての人のためのビジネス著作権法』(中央経済社)
- 佐渡島紗織ほか『レポート・論文をさらによくする「引用」ガイド』(大修館書店)
- デイリー法学選書編修委員会編『著作権法のしくみ』(三省堂)