Webライターとして仕事をするうえで、よく使うのが「引用」ですよね。ですが正しく引用するためには、そのルールを決めている著作権を知ることが大切となります。
そこで今回は著作権について、基本知識から侵害の事例、利用方法までまとめました。あまり法律に詳しくない方にもわかりやすいように書いています。ぜひ著作権について確認してみてください。
引用について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
なお今回の記事は、こちらの書籍を参考に作成しています。
著作権と著作権法の基本知識
著作権とは?何のためにある?
著作権とは、簡単にいうと「作品(著作物)の作者(著作者)に与えられた権利」です。。
それでは、もし著作権が存在しなければどうなるでしょう?たとえば、Aさんがマンガを描いて発表します。絵もストーリーもよく大人気に。でもそのマンガを勝手にコピーして販売したり、ウェブサイトで誰でも読めるようにできてしまいます。
するとAさんには原稿料は入ってきません。マンガを描いて生活ができないので、描くのをやめてしまうでしょう。これではマンガや小説、絵画、音楽などの文化が育ちません。そのために、著作権で著作者の権利を守ることが大切なんです。
「著作権が守られないとどうなるか」については、文化庁が公開しているこちらの動画をみるとよくわかります。
著作権法とは?著作者人格権と著作財産権
著作権法とは「知的財産法(*1)」のひとつで、「著作物についての著作者の権利(著作権)を定めた法律」です。政府が運営するこちらのサイトで、法律の全文をみることができます。
日本で初めて著作権法が成立したのは明治32年(旧著作権法といわれます)。その後、現在の著作権法が昭和45年(1970年)に制定されました。
また著作権法は、時代の変化に合わせてたびたび改正が行われています。ここ10年のあいだでも、平成24・26・30、令和2年に改正が行われました。直近の令和2年改正では、「リーチサイト対策」や「侵害コンテンツのダウンロード違法化」などが追加されています(詳しくは文化庁サイト)。
*1:知的財産法は「知的な創作活動で創作した人に、創作物を他人に無断で利用されない権利を与える法律」で、著作権法のほかに次のような法律があります。
- 特許法
- 実用新案法
- 意匠法
- 商標法
- 不正競争防止法
- 種苗法 など
著作者人格権と著作財産権
著作権法では、著作者の権利として「著作者人格権」と「著作財産権」を定めています。
まず著作者人格権は「著作者の人格的な利益を保護する権利」で、次の3つの権利が認められています。
1.公表権 | 著作者がいつどのような方法で著作物を公表するか決められる権利 |
2.氏名表示権 | 著作者が著作物を公表する際、著作者名を表示するか、また本名・ペンネームのどちらを使うか決められる権利 |
3.同一性保持権 | 著作者が著作物の内容やタイトルを、他人から勝手に変更されない権利 |
次に著作財産権は「著作者の経済的な利益を保護する権利」です。著作権法では、著作権者がもつ権利として次の11種類の支分権を定めています。
1.複製権 | 著作物を、印刷、写真、コピー、録音などの方法で複製する権利。著作権法の中心となる重要な権利 |
2.上演権・演奏権 | 著作物を上演・演奏する権利。ライブだけでなく、CDなどに録音したものを流すことも含まれる |
3.上映権 | たくさんの人に見せるために、著作物を上映する権利 |
4.公衆送信権・公の伝達権 | テレビ、ラジオ、インターネットなどで著作物を送信する権利。またテレビ、ラジオ、インターネットなどを使って伝達する権利。サーバーにデータをアップロードし、「誰でもダウンロードできる状態」にすることを「送信可能化」とよぶ |
5.口述権 | 朗読などで著作物をたくさんの人に伝える権利 |
6.展示権 | 美術の著作物や未発行の写真の著作物を、たくさんの人に見せるために展示する権利 |
7.頒布権 | 映画の著作物を、公衆向けに頒布(譲渡・貸与)する権利 |
8.譲渡権 | 著作物(映画の著作物以外)または複製品を譲渡によってたくさんの人に提供する権利 |
9.貸与権 | 著作物(映画の著作物以外)の複製品をたくさんの人に貸与する権利。有償、無償は問わない |
10.翻訳権・翻案権など | 著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化するなど、二次的著作物をつくる権利 |
11.二次的著作物の利用権 | 著作物(原著作物)からつくられた二次的著作物について、原著作物の作者が二次的著作物の作者と同じ権利をもつこと |
ちなみに、「著作者人格権」と「著作財産権」では次のような違いもあります。
著作権はいつ発生する?届け出は必要?
著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生します。そのためどこかに届け出る必要はありません。このような方法を「無方式主義」とよび、日本をはじめとしてベルヌ条約に加盟する160カ国以上で採用されています。
その反対が「方式主義」で、「届け出て登録することで、はじめて著作権が発生する」方法。かつてアメリカなどで採用されていました。
著作権はいつまで有効?期限(保護期間)について
著作権のうち「著作者人格権」の保護期間は、「著作者が生存している間」です。ただし、死後であっても侵害する行為をしてはならないとされています。
もうひとつの「著作財産権」については次のとおり。
著作権の保護期間 | |
---|---|
実名または周知のペンネームでの著作物 | 著作者の死後70年 |
無名または周知でないペンネームでの著作物 | 公表後70年 |
団体名義の著作物 | 公表後70年 |
映画の著作物 | 公表後70年 |
著作権の使用料はいくら?
他人の著作物を使用する際には、使用料を支払うのが一般的です。
たとえば音楽では「BGMの使用料金は、一般店舗の場合500㎡まで年間使用料6,000円、1000㎡まで10,000円(消費税別)」と公表されています(中小企業庁サイトより)。
こちらのJASRACのサイトでは、概算使用料を確認できます。
著作物にあたるもの、あたらないもの
著作物とは?©マークの意味は?
著作物とは、著作権法で保護される対象で、次の条件すべてを満たす必要があります。
- 「思想または感情」を表現したものである
- 思想または感情を「表現したもの」である
- 思想または感情を「創作的」に表現したものである
- 「文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」である
またそれぞれの条件を具体的にみると、以下のとおりです。
1.「思想または感情」 | 客観的な事実・データに「考え・思い」が | 客観的な事実・データ |
2.「表現したもの」 | 「アイデア」をまとめた文章 | 頭のなかで考えている「アイデア」 |
3.「創作的」 | 自分で描いた絵 | 他人の絵をコピーしたもの |
4.「文芸、学術…に属するもの」 | 文化的な作品 | 工業製品 |
たとえば「日本の人口は1億2598万8千人」は、客観的な事実・データで、「思想または感情」ではないため著作物ではありません。しかし、そこに「考え・思い(思想または感情)」が結びつけば著作物です。そのため新聞記事は、著作物にあたると考えられます。
具体的な著作物の例
著作権法10条では、具体的な著作物の例として次の9例を示しています。
1.言語の著作物 | 作文、小説、詩歌、俳句、講演など |
2.音楽の著作物 | 楽曲、曲がついた歌詞 |
3.舞踊または無言劇の著作物 | 日本舞踊、バレエ、ダンス、パントマイムの振り付けなど |
4.美術の著作物 | マンガ、絵画、彫刻、書、舞台装置など |
5.建築の著作物 | デザイン性の高い芸術的な建造物 |
6.図形の著作物 | 地図、学術的な図面、図表、模型など |
7.映画の著作物 | 映画、ドラマ、ネット配信動画、ゲームソフト、コマーシャルフィルムなど |
8.写真の著作物 | 写真など |
9.プログラムの著作物 | コンピュータプログラム |
そのほか、次のものも著作物です(著作権法11~12条)。
二次的著作物 | 上記1~9の著作物をもとに、翻訳・編曲・変形・脚色・映画化・翻案などして創作したもの |
編集著作物 | 百科事典、新聞、雑誌、詩集、論文集など「素材の選択又は配列によつて創作性を有する編集物」 |
データベースの著作物 | データベースのなかで、情報の選択または体系的な構成によって創作性を有するもの |
ここで著作物である条件として、「プロの作品・アマの作品」は関係ありません。子どもが学校で書いた作文であっても、著作物となります。
著作物に©マークは必要?
前述したとおり、日本では「著作物が発生した時点で自動的に発生する」という「無方式主義」が採用されています。そして、著作物に「©」マークを記載する必要はありません。マークがなくとも、著作権法で保護される対象となります。
でも、よく「©」マークを記載したウェブサイトを見かけますよね(このブログでも使っています)。これにはどんな意味があるのでしょう?
これは、かつてアメリカなどが採用していた「方式主義(登録することで著作権が発生する制度)」において、登録した著作物が保護されるための表記方法でした。©は「Copyright(著作権)」の頭文字で、次のように記載します。
- © + 発行年 + 著作権者 + 権利留保
日本では表記する必要はありませんので、慣習として残っていると考えてください。
著作物にあたるもの、あたらないもの
著作物にあたるもの
著作物にあたるのは、「具体的な著作物の例」でご紹介したものです。「これは著作物にあたるの?」と判断に迷うときは、著作物の定義の「思想または感情を表現したもの」であるかどうかで考えてみてください。
つまりは「その作成物に創作性があるかどうか」です。子どもの作文であっても、考えを述べていれば著作物にあたります。大人が書いた記事であっても、事実を並べただけならば著作物にはあたりません。
著作物にあたらないもの
次のようなものは、著作物にあたりません。ただし「創作性をもたせれば著作物にあたる」ものもあります。安易に判断せず、サイトなどで使う際にはよく調べてからにしましょう。
- データやグラフ(ただし創作的表現といえるイラスト化されたデータは著作物)(「創作的」でないため)
- 創作性をもたない新聞や雑誌のタイトルや見出し
- 本のタイトル
- ゲームなどのルール(ルールブックは著作物)
事例の「創作性をもたない」については、「ありふれた単語・表現、事実のみを並べただけのもの」と考えてください。反対に「創作性をもつ」とは、「著作者の個性が発揮されているもの」です。
また著作権法13条において、次のものは著作権にあたるが、著作権法で保護されないとされています。これは著作者の権利よりも、国民に広く知らしめることが重要とされているためです。
- 憲法その他の法令
- 国、地方公共団体の機関などが発する告示、訓令、通達など
- 裁判所の判決、決定、命令、審判など
- 上記1~3の翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体などが作成するもの
著作権の侵害とその事例を紹介
著作権を侵害するとどうなる?親告罪とは?
著作権を侵害すると、著作権者から次の請求をされることがあります(民事上の措置)。
- 侵害行為の差止請求
- 損害賠償の請求、慰謝料の請求
- 不当利得の返還請求
- 名誉回復などの措置請求
また上記の民事上だけでなく刑事上の罰を受けることもあります。たとえば、著作権の侵害があった場合は、「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」が科されます。そのほかの著作権関連の刑事罰はこちらを参考にしてください。
親告罪とは?
「親告罪(しんこくざい)」とは、被害者自身が訴える必要がある犯罪のこと。著作権法は、かつて親告罪だったため、被害者以外の第三者が告発しても著作権法で罪に問うことはできない状況でした。
ところが、平成30年の改正によって、要件を満たす一部の犯罪については非親告罪となりました。例えばような場合は非親告罪となり、被害者(著作権者)の意思に関係なく罪に問われます。
- 漫画の海賊版を販売する
- 違法コピーした映画をインターネットにアップ
著作権法違反になる事例
具体的にどのようなことをすると、著作権法違反になるのか?事例はつぎのとおりです。
海外で作られた海賊版のマンガを
ネットで違法にデータを配信する。また違法なデータと知りながら、データをダウンロードして楽しむ
著作権侵害にならない無断利用の方法
他人の著作物を利用する場合、著作権者の許可をもらうのがルールです。しかし、あまり著作物を保護しすぎることで、かえって文化の発展を阻害することもありえます。
そのため著作権法では、一部の例外的な場合には許可をもらわずに著作物を使っていいこととしています(第30条〜第47条の8)。ここには「私的利用」、「引用」、「転載」、「教育機関による複製」などがあります。
引用については、こちらの記事でくわしくご説明しています。
項目がたいへん多いため、詳しくはこちらのサイトで確認してください。
著作権のトラブルには専門家を頼って
自分が撮影した写真が、無断で使われた。もしくは引用のつもりで使った文章が「著作権の侵害だ」と警告が来たなど、著作権のトラブルに巻き込まれた場合。
このような場合は迷わずに専門家に相談しましょう。弁護士などの専門家を頼って、しっかり解決して、自分の本来の仕事を行うことが大切となります。
こちらは、信頼できる専門家を見つけることができるサイトです。困ったときには、まず相談してみてください。
・相談サポート:全国約1600事務所から相談可能事務所を探せるサイトです。無料での相談をおこなうこともできます。
著作権を知るためのおすすめ本
前述したとおり、著作権法はたびたび改正されます。そのため著作権法を本で学ぶときには、文化庁ウェブサイトなどでいつ改正されたかを調べて、その改正内容が記載されている本を選びましょう。
おすすめはこちらの2冊。どちらも読みやすく、理解しやすくなっています。基本だけでもつかんでおくと、今後仕事がしやすくなりますよ。
参考文献
- 文化庁『著作権法入門 (2019-2020)』(著作権情報センター)
- 福井健策ほか『インターネットビジネスの著作権とルール(第2版)』(著作権情報センター)
- 雪丸真吾ほか『コンテンツ別 ウェブサイトの著作権Q&A』(中央経済社)
- 加藤晋介『改正著作権法がよくわかる本』(成美堂出版)
- 森公任ほか『改正対応 著作権・コンテンツビジネスの法律とトラブル解決マニュアル』(三修社)